等差数列の和の公式には2種類あります。
等差数列の初項から第 \(n\) 項までの和を \(S_n\) とする。
初項 \(a\)、末項 \(l\) のとき
$$S_n=\frac{1}{2}n(a+l) $$
初項 \(a\)、公差 \(d\) のとき
$$S_n=\frac{1}{2}n \lbrace 2a+(n-1)d \rbrace$$
今回はそれぞれの成り立ちとどうやって使い分ければよいのか、その活用法を紹介します。
- 等差数列の和の公式はどうやって求めるの?
- 公式の簡単な導き方はないの?
- 公式が2つあるけど、どうやって使い分けるの?
当てはまる人はぜひ読んでください。
等差数列の和の公式 \(S_n=\frac{1}{2}n(a+l) \) の成り立ちを考える
最初は
$$S_n=\frac{1}{2}n(a+l)$$
の成り立ちと活用法を学習しましょう。
なぜ、この公式を使えば等差数列の和が求められるのかを考えます。
具体例を用いて考えてみましょう。
1から10までの整数を足し合わせた数の和 \(S\) は?
これくらいなら小学生でも解くことができます。
$$S=1+2+3+4+…+10=55$$
電卓を使っても暗算で解いてもいいです。
答えは55です。
ではこの問題はどうでしょう。
1から100までの整数を足し合わせた数の和 \(S\) は?
普通に計算するとどこかで計算ミスをしそうだなあ…。
暗算でやるのはキツイし、電卓を使ってもどこかで間違えそうです。
昔の人はこの問題を工夫して解きました。
それが以下の方法です。
まずは
\(S=1+2+3+4+……+100\) … ①
のように ① とおいてしまいます。
次に、足し合わせる順番をひっくり返した式を ② とします。
\(S=100+99+98+97+……+1\) … ②
① と ② はもちろん同じ意味です。
\(1+2+3\) と \(3+2+1\) が同じ意味だっていうのと同じだね。
この ① と ② の左辺同士、右辺同士を足します。
\begin{array}{rr}
& S= 1+ 2+ 3+ 4+……+100\\
+\big{)}&S=100+99+98+97+……+1\\
\hline
&2S=101+101+101+101+……+101
\end{array}
左辺は求めたい \(S\) が ① と ② のどちらにもあるので、合わせて \(2S\) となります。
右辺ですが、縦のラインで見ると101が100個あるので、\(100\times101\)をします。
$$2S=100\cdot101$$
求めたい和は \(S\) なので、最後に2で割ります。
$$S=\frac{1}{2}\cdot100\cdot101=5050$$
めちゃくちゃ賢い解き方ですよね!
さて、ここで「101」とはどこから出てきた数字なのかを考えます。
一番最初の数である 1 と、一番最後の数である 100 を足したものだね。
つまり101 というのは、初項+末項から求められます。
また、100 というのは「何個足し算をしているのか」を表した数なので、項数にあたります。
以上のことから、一般的な公式は
$$ S=\frac{1}{2}\times(項数)\times(初項+末項) $$
となります。
等差数列の初項から第 \(n\) 項までの和を \(S_n\) とする。
初項 \(a\)、末項 \(l\) のとき
$$ S_n=\frac{1}{2}n(a+l) $$
初項は「最初」という意味なので、アルファベットの最初の文字である \(a\)
末項は「最後」「last」の \(l\)
項数は「number」の \(n\) の略
例題
(1)初項3、末項19、項数15の等差数列の和を求めよ。
(2)初項1、公差3の等差数列の初項から第n項までの和を求めよ。
解説
(1)は等差数列の和の公式がそのまま使えます。
$$S=\frac{1}{2}\cdot15(3+19)$$$$=\frac{1}{2}\cdot15\cdot22$$$$=165$$
(2)は、ぱっと見だと末項が見当たらないので公式が使えません。
末項が書いていないということは解けないということ?
問題文に「初項から第n項まで」とあるから一番最後の項は?
第n項だ!
つまり第n項が末項ということだね。
「初項から第●項まで」とあったら第●項が末項
ここでさらに注目したいのが、「末項が第n項」であるということです。
「第n項を求めること」と「一般項を求めること」は同じだったね!
末項を求めるために一般項を求める公式を使いましょう。
(一般項)=\(1+(n-1)\cdot3\)\(=3n-2\)
今回の問題では「一般項」と「第n項」と「末項」はすべて同じ意味
これで末項を求めることができたので、公式が使えます。
初項が1、公差3、末項が3n-2だから…
$$S=\frac{1}{2}n\lbrace1+(3n-2)\rbrace$$$$=\frac{1}{2}n(3n-1)$$
答え(1)165、(2)\(\frac{1}{2}n(3n-1)\)
等差数列の和の公式 \(S_n=\frac{1}{2}n \lbrace 2a+(n-1)d \rbrace\) の成り立ちを考える
続いて、
$$S_n=\frac{1}{2}n \lbrace 2a+(n-1)d \rbrace$$
の成り立ちと活用法を学習しましょう。
なぜ、この公式を使えば等差数列の和が求められるのかを考えます。
今回は忘れたときにすぐに思い出せる方法で紹介します。
(2)初項1、公差3の等差数列の初項から第n項までの和を求めよ。
先程の問題を例に考えます。
これを解くために先程の学んだポイントを思い出します。
今回の問題では「一般項」と「第n項」と「末項」はすべて同じ意味
今回の問題では「一般項」と「第n項」と「末項」はすべて同じ意
末項と一般項が同じということは、同じ公式を使えるということか!
初項 \(a\)、公差 \(d\) の等差数列の一般項 \(a_n\) を求める公式は
$$a_n=a+(n-1)d$$
ですので、末項 \(l\) を求める公式も
$$l=a+(n-1)d$$
ということになります。
これを等差数列の和の公式に当てはめてみましょう!
$$S_n=\frac{1}{2}n(a+l)$$$$=\frac{1}{2}n \lbrack a+ \lbrace a+(n-1)d \rbrace \rbrack$$$$=\frac{1}{2}n \lbrace 2a+ (n-1)d \rbrace$$
公式が求められた!
末項を使う公式を覚えていないとできないやり方ですが、逆に言えば1つ覚えてしまえばもう1つも覚えられるということです。
等差数列の初項から第 \(n\) 項までの和を \(S_n\) とする。
初項 \(a\)、公差 \(d\) のとき
$$S_n=\frac{1}{2}n \lbrace 2a+(n-1)d \rbrace$$
初項は「最初」という意味なので、アルファベットの最初の文字である \(a\)
公差は英語で「common difference」なので \(d\)
項数は「number」の \(n\) の略
例題
では、改めて公式を使って問題を解いてみましょう。
初項1、公差3の等差数列の初項から第 \(n\) 項までの和 \(S_n\) を求めよ。
解説
初項、公差、項数のすべてがわかっているので、公式がそのまま使えます。
$$S=\frac{1}{2}n \lbrack 1+ \lbrace 1+(n-1) \cdot 3 \rbrace \rbrack$$$$=\frac{1}{2}n \lbrace 2+(n-1) \cdot 3 \rbrace$$$$=\frac{1}{2}n(3n-1)$$
答え \(\frac{1}{2}n(3n-1)\)
扱った例題は、先ほど末項を使う公式の例題と同じでした。
つまり、1つの問題でも解き方は2パターンあるということです。
最後に、ちょっとだけ応用した問題を2つの公式を使って解いてみます。
ちょっとだけ応用問題
次の等差数列の和 \(S\) を求めよ。
$$12,15,18,…,99$$
実際の数列を見て、自分で必要な情報を抜き出す問題です。
この問題を2通りの解き方で解いてみようと思います。
公差を使う公式 \(S_n=\frac{1}{2}n \lbrace 2a+(n-1)d \rbrace\) で解く
公差を使う公式には初項、公差、項数が必要です。
初項は最初の数だから12、3ずつ増えているから公差は3。
この2つはすぐにわかるね。
ここで困ることは、項数は何?ということです。
項数はなんだろう?99って何番目?
こういうときは、他にわかる情報はないかを考えます。
初項と公差がわかるから、一般項が求められるね!
一般項 \(a_n\) は
$$a_n=12+(n-1) \cdot 3$$$$=3n+9$$
これで一般項、つまり \(n\) 番目の数が \(3n+9\) ということがわかりました。
3n+9が99になるときを考えるのか!
$$3n+9=99$$$$3n=90$$$$n=30$$
99は30番目ということがわかった!
ということは項数は30だね。
というわけで、公式 \(S_n=\frac{1}{2}n \lbrace 2a+(n-1)d \rbrace\) に当てはめてみましょう!
$$S=\frac{1}{2} \cdot 30 \lbrack 12+ \lbrace 12+(30-1) \cdot 3 \rbrace \rbrack$$$$=15 \lbrace 24+29 \cdot 3 \rbrace$$$$=15(24+87)$$$$=15 \cdot 111$$$$=1665$$
というわけで、答えは1665です。
答え \(1665\)
末項を使う公式 \(S_n=\frac{1}{2}n(a+l)\) で解く
続いて、末項を使う公式で1665を導いてみましょう。
末項を使う公式には初項、末項、項数が必要です。
項数の30の求め方はさっきと同じなので省略します。
初項は12で、項数はさっき求めた30だね。
あとは末項ですが、これもすぐにわかりますね。
最後の数だから末項は 99だね!
というわけで、公式 \(S_n=\frac{1}{2}n(a+l)\) に当てはめてみましょう!
$$S=\frac{1}{2} \cdot 30(12+99)$$$$=15 \cdot 111$$$$=1665$$
求められました。
項数を求める過程を省略したとはいえ、あっさりと解けましたね。
答え \(1665\)
まとめ
今回は等差数列の和を求めるための2つの公式を学習しました。
どちらを使うにしても項数が必要ですが、一般項を求めれば項数もわかりましたね。
項数がわからないときは一般項を求めればいい
足りない情報は自分で求めることで、どちらの公式を使っても解くことができます。
個人的には末項を使う公式 \(S_n=\frac{1}{2}n(a+l)\) を使い続けることをおすすめします。
確かに \(S_n=\frac{1}{2}n \lbrace 2a+(n-1)d \rbrace \) よりも断然使いやすいですね!
末項を使う公式の方が覚えやすいし、途中計算も楽ですよね。
大抵の問題は \(S_n=\frac{1}{2}n(a+l)\) だけ知っていれば困りません。
むしろ私は公差が与えられている問題でも、末項を求めてから \(S_n=\frac{1}{2}n(a+l)\) を使って解きます。
末項が与えられていない問題も、一般項を求めることでわかるようになります。
つまり、とにかく困ったら
まずは一般項を求めろ!!
ということです。
もちろんどちらとも使える方が融通が利くのですが、1つでも覚えることを減らしたい!という人は \(S_n=\frac{1}{2}n(a+l)\) を使いこなすことに全力を尽くしましょう。
- \(S_n=\frac{1}{2}n(a+l)\) が使えれば \(S_n=\frac{1}{2}n \lbrace 2a+(n-1)d \rbrace \) はぶっちゃけ使わない。
- 末項や項数がわからないときは一般項を求めればいい。
- 一般項と第n項はいつでも同じ意味。
- 結論、一般項は有能!